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盗
「あの、此処に来るように言われた者なんですが」
「え、聞いてませんが」
見つめ合う男と女。暫く視線が有ったかと思うと、固まった空気を切り裂くように女性の方から少し照れながら話し出した。
「スミマセン、実は市役所の方に此方に来るように言われまして、連絡は入れて貰えると言っていたんですが」
「そうですか。あ、本当だ携帯にメールが来てましたスミマセン、普段使う事あまりないので」
そう言いながら携帯を恐る恐る触る姿は現代人には見えなかった。
何よりその握った携帯電話自体に埃が積り、充電しっぱなしなのか手に取った瞬間そこだけ埃が無くなり型が出来る程であった。
「じゃあ話して貰えますか?まぁ話によっては別の場所に行って貰うことも有りますが」
「そうなんですか。とにかく聞いて貰えるだけでも私にとっては有り難いですので」
そう言っている間に、店主らしき男は駄菓子を食べながら、お茶の代わりに何故かつぶつぶ果汁ジュースの缶を手渡した。
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