対面

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 三人が怪我を負った男を連れて川崎の遼二の自宅へと戻ったのは、午後の十一時になろうという頃だった。もう深夜の時間帯だが、遼二の家の隣で開業医をしているという”おやっさん”が快く診察を引き受けてくれたので、一同はホッと胸を撫で下ろしていた。  男の具合は、打ち身は酷いが入院させるほどの重傷ではないということなので、特に総合病院などには行かずに、今夜は遼二の部屋で休ませることとなった。気を失ったまま意識は未だ戻らず、診察後は医師のおやっさんも付き添って、遼二の家はてんやわんやだ。いつもなら寝ているはずの両親も起きてきて、皆で男を遼二の自室がある二階へと担ぎ上げたのだった。  ほどなくして紫月もやって来るというので、剛と京は帰ることとなった。男が目覚めた時に、あまり大勢で顔を揃えているのも、かえって不安を与えるようで良くないだろうと思ってのことだ。遼二は二人に心からの礼を述べると、玄関先まで出て彼らを見送った。すると、剛らとは入れ違いの形で反対方向から紫月が走って来るのが見えた。紫月の家はワンブロック隔てたすぐ真裏なのだが、息せき切らして走って来たという様子だ。 「悪い、遼! 風呂に入っててよ。メール、今さっき見た!」  時間も遅かったので、指輪の男らしきを見つけたことを取り敢えずメールでだけ報告したのだ。紫月が気付かなければ、また明日でもいいと思ってのことだったのだが、メールを見てすっ飛んで来たらしい。
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