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「剛と京は?」
「ああ、今帰ったとこだ」
「……そう」
遼二らが本当に指輪の男捜しをしてくれていたことに、紫月は滅法驚いたといった様子で、礼の言葉も上手くは出てこないようだった。しかも、本当に見つけ出してくるなど、まさに信じ難いといった顔付きで遼二を凝視する。
「えっと……遼、何つったらいいか……その、ありがとな」
それだけ言うのが精一杯といった調子である。
「いいよ。とにかく見つかったのは良かったが、怪我もしてるし、とりあえず俺ン部屋へ行くぞ」
「あ、うん」
二人は医師のおやっさんが待つ遼二の自室へと向かった。
遼二の部屋は二階に一室だけある八畳の洋室だ。廊下を出ると、対面には三畳ほどの物置的な部屋があるだけで、左程広くはない。両親は階下で暮らしているし、兄弟もいない一人っ子なので、割合悠々自適の生活である。たまに紫月や剛らが泊りにやって来るも、隣の部屋に両親が寝ているとかいうわけではないので、ちょっとした一人暮らし的な自由感覚だった。
「夜分にすいません。親父さん、お袋さん、お邪魔します」
紫月は遼二の両親に向かってペコリと頭を下げると、そのまま二階へと急いだ。
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