不安な一夜

2/6
前へ
/343ページ
次へ
「まあとにかく……精神的なことは別として外傷の処置はしておいた。彼が目覚めて何かあれば、夜中でも全然構わねえから遠慮せずに声掛けてくれ。一応、湿布薬と鎮痛剤は置いていく。痛みが酷いようなら飲ませて構わないが、先ず俺を呼んでくれればいいさ」  おやっさんはそう言って、隣の医院へと帰っていった。  残された遼二と紫月は、遠慮がちに互いを窺いながらも言葉少なだ。おやっさんから聞かされた衝撃の現実に、何と言っていいやら戸惑いは深まるばかりである。  先に口を開いたのは遼二の方からだった。 「なあ、ほんとに見覚えねえのか?」  ベッド上の男を横目にしながらそう問う。 「ん……正直、分かんね……ってのが本音。ツラとかも思い出せねえし……」 「そっか……。そういえば、指輪持ってきたか?」
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

373人が本棚に入れています
本棚に追加