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「なぁ、遼……」
「うん?」
「悪かったな、その……まさか本気でこいつを捜しに歩き回ってくれてたなんてよ……剛と京にまで世話掛けちまって……何て礼を言ったらいいか……上手く言えねんだけど……感謝してるよ」
ポツリポツリと、紫月は言葉を選ぶようにそう言った。
「ん、いいさ。俺もどんなヤツなのか見てみてえ……って思ってたからよ」
「そっか……。ほんと、マジで済まねえ……てか、さんきゅな」
「構わねえさ。それよかお前、風呂はもう済んだって言ってたよな?」
「ああ」
「んじゃ、俺ちょっくら浴びてくっから! もしもこいつが起きたら、よろしく頼むわ」
「ん、分かった。ゆっくり浸かって来いよ」
今夜は紫月もここへ泊まり込むつもりである。遼二の母親が用意してくれた二組の布団が部屋の隅っこに畳んであったので、なるべく音を立てないように気遣いながらそっと敷き終えると、遼二が風呂から上がってくるのをおとなしく待つことにした。
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