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愛しいからこそ
少し強引に、自らも紫月の方に身を乗り出して腕の中へと抱き寄せる。
「おい……遼……! まさかこんなトコでおっ始めるつもりじゃねっだろな……って、おい!」
焦って身を捩る紫月を押さえ込むように、更にすっぽりと抱き包みながら、
「なんもしねえよ。ただこうしてくっ付いて寝るだけだ」
「……ったってよ、ヤツが起き出したら、いくら何でもヤべえ……っての」
「なんもヤベえことねえだろ? 寝相が悪りィだけだって言えばいい」
「……おい、遼っ……」
「暴れんなって。マジでなんもしねえから――ただ寝付くまでこうしてたい。それだけだ」
「なんも……するとかしねえとか……そういう問題じゃ……」
腕の力は弱まらず、どうあっても放す気はないらしい。抱き締められた腕の隙間から、ふと垣間見えた遼二の瞳が僅か切なげに揺れているように思えて、紫月もまた眉をひそめがちに表情を緩めた。
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