愛しいからこそ

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「俺が指輪の野郎とどうこうなったら――とか、そういうのが心配なんだろ?」 「――――!」  さすがに絶句させられた。普段は割合クールというか、思っていることを表に出さないタイプの紫月が、まさかこんな核心を突いたようなことを堂々と口走るとは思いも寄らなかったからだ。  ああ、ここが暗闇で良かった。灯りが点いていたら、図星を指されて頬が真っ赤に紅潮しているのがバレてしまっただろう。遼二は未だ視線を泳がせつつも、照れ隠しをするように口を尖らせた。 「バカ言え……何で俺がそんな心配しなきゃなんねんだって。ンなこと、これっぽっちも考えてねえっての……」 「ふぅん? そうか?」  紫月は相も変わらず笑みながら、またひとたび軽く唇を重ねる。本当に触れ合うだけの――ともすればスネた子供をなだめるような可愛らしいキスだ。  その瞬間、遼二の中で何かが弾けて飛んだ。  むんずと髪ごと頭を引き寄せ、顔を交差させて、たった今放されたばかりの唇を押し包むように重ね合わせる。ムードを味わう間もなく、まるで獣のように、本能だけをねじ込むように舌を絡ませいきなり濃厚に唇を奪い取った。
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