愛しいからこそ

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「……ッ、ちょ……遼……っ!」  何もしない――だなんて言っておきながら、まるで嘘じゃないか! そう言いたげな紫月の視線が恨めしげに揺れている。  いや、嘘じゃない。本当に何もしないつもりだった。ただその温もりを肌で感じながら眠りにつきたかっただけだ。 「なんも……しねえつもりだったけど、お前が煽るから……」 「はぁ!? 俺がいつ煽った……って、遼ッ……!」  今一度激しく唇が重ねられ、脚でも身体を包み込むように絡め取って引き寄せられる。まるでぬいぐるみか抱き枕のように――だ。 「遼……! てめ、マジでちょい待……っ」 「いいから――ほんのちょっとだけ! マジでちょっとだけだから」  言葉ではそう言ったものの、気持ちも身体も”ちょっとだけ”で済みそうにない。遼二は本能のままにギュウギュウと紫月を腕の中へと抱き締めて、酸欠になりそうなくらい濃厚なキスを繰り返した。焦る彼のやわらかな髪が乱れる首筋を掌でユルユルと撫でながら、暗がりの中で愛しさがあふれ出す。(つい)ぞ声に出して()ってしまいそうになった。  好きだ――――!
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