愛しいからこそ

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 遼二は紫月を背中から包み込むように抱き直すと、湯上がりの香る髪へと軽いキスを落とした。チュッ、チュッと放しては口付け、口付けては放し――を繰り返す。  幾度かそんな行為が繰り返されていたが、『もうこれ以上は何もしない』という言葉の通り、本当に抱き締めて眠るだけのようである。  だが、ふと尻の辺りに当たっている独特の硬い感覚に気が付いて、紫月は遠慮がちに顔だけを遼二へと向けた。 「なぁ、おい、遼……」 「――何?」 「……っと、おま……それ、何だよ……」 「ああ、悪りィ。あんまし治まんねえようだったら便所で抜いてくっから」  そう言って軽く笑い、わざとその”硬さ”を押し付けるように再びギュッと抱き寄せられて――紫月の心臓がドキリと跳ねた。
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