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黒と赤、二つの指輪
「おい……」
「ああ――気が付いたみてえだな」
遼二は男を驚かさないようにと気遣いながら、なるたけ穏やかに声を掛けた。
「――っす! 気が付いたか? 具合はどうだ? 今、灯りを点けるから……ちっと眩しくなるけど勘弁な?」
そう言って部屋の電気のスイッチを入れた。
見ると、やはり目が覚めていたのか、ベッドの上では指輪の男が緊張の面持ちで身を固くしているのが分かった。その表情には強い警戒の色が見て取れる。
「あー、えっと……いきなりで驚くかも知んねえけどさ、あんたを此処へ連れて来た経緯とか……今からちゃんと説明すっから、心配しねえで聞いてくれな?」
今一度、遼二が丁寧にそう言うと、男は安心したのか、僅かに肩の力が抜けたような気配がした。いきなり電気を点けたことで眩しそうにしていたが、しばらくすると明るさに目が慣れてきたのか、男は遼二を見て、
「……! パパ……!?」
少々逸ったように身を乗り出してそう呟いた。
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