黒と赤、二つの指輪

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 どうやら隣のおやっさんの診療のお陰か、容態は大分落ち着いているようである。遼二は先刻横浜で彼と出会ってからの経緯をザッと説明して聞かせることにした。  親友の剛と京と共に横浜へ行った帰り道で、怪我を負っている彼と偶然出会ったこと。彼がその場で気を失ってしまったので、バイクで連れ帰り、隣で開業医をしている医師に診せたことなど、順を追って伝えた。  すると男は驚きつつも、助けてもらったことに恐縮したのか、丁寧に頭を下げながら詫びと感謝の言葉を口にした。 「……あの、ありがとうございました。ご迷惑をお掛けして……申し訳ありません」  遼二らが自分に危害を加えようとしているような相手ではないと悟ったのだろう、固かった表情から徐々に警戒心が解けていくのが感じられた。
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