黒と赤、二つの指輪

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 とにかくも彼の側へと歩み寄り、なるべく気持ちを乱すことのないようにと、少しの距離を取ったところに遼二と紫月は二人並んで腰を下ろした。ベッド上の彼からすれば、床へと直に座る二人を見下ろす形になるのが更に安心感をもたらしたようだった。  とりあえず落ち着いたところで、彼にはいろいろと訊きたいことが山積みなわけだが、あまり急かしても良くないだろうか――遼二は先ず親しみを込めながら名乗ることにしたのだった。 「えっと、そういや自己紹介がまだだったな。俺は鐘崎遼二。川崎四天学園ってトコの三年でさ。ここは俺の家だから安心してくれていいぜ。でもって、こいつはダチの……」 「――一之宮紫月だ。俺も遼二と同じ川崎四天で、クラスも同じ……なんだけど」  紫月は先程からのやり取りの中で、この男が本当に幼少の頃に出会った子供なのかを思い出そうとしていた。  だが、やはり分からない――というよりは見覚えがあるのかないのか、それさえも迷うというのが実のところだ。
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