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たわいないやり取りの中で、何でもいいから取っ掛かりを探したいふうな紫月と、そんな紫月を目の前にしても何一つ思い出す気配もないような倫周というこの男――二人の様子を見ていた遼二はチラリと隣に目をやり、紫月の肘を突いた。
「な、あれ見せてもいいんじゃねえか?」
男の容態も落ち着いているようだし、例の指輪を見せても大丈夫だろうと思ったのだ。紫月は頷くと、胸ポケットから例の黒い指輪を取り出し、
「あんたさ――これに見覚えねえか?」
男の前へと差し出して見せた。すると、
「――――え!? これッ……!?」
男は思わず仰け反るくらいに驚いた様子で瞳を見開いた。
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