赤い指輪の男の正体

2/5

369人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
 少々がっかりしたものの、ではよくよく考えれば、この”倫周に指輪をくれた人物”こそが紫月と湖で出会った少年ということになるのではないか――? 「ならさ、あんたにこの指輪をくれたのって誰なんだ?」  横から口を挟んだ遼二の問いに、倫周は素直にこう答えた。 「これは……僕の通う白帝学園の先輩から戴いたものなんです」そして、「でも不思議なご縁……っていうのかな。僕の戴いた指輪と一之宮……さん、が小学生の頃に戴いた指輪が偶然同じ形だなんて」初対面だからなのか、紫月の名前を呼ぶことに少し遠慮がちにしながらも、珍しい偶然もあるものだといったふうにそんなことを口にした。  いや、待て――確か、この指輪は百貨店やら宝石店で誰しもが買えるという代物ではなかったはずだ。紫月の話によれば、湖で出会った少年の家で特別に作ったという――いうなれば”特注品”であるから、そうそう誰もが持っている物ではないと思える。つまり偶然お揃いのデザインだということは有り得ないはずなのである。そう思った遼二は、更に突っ込んだ話題へと振るべく、 「じゃあさ、あんたにこの指輪をくれた先輩ってヤツについて、もうちょい詳しく教えて……」 ――もらえないだろうか――そう訊こうとした時だった。突如切羽詰まったような声で、倫周の方が一足先にこう叫んだ。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

369人が本棚に入れています
本棚に追加