赤い指輪の男の正体

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「あの、すみません! こんなことをお願いできる立場じゃないのは重々承知してますが……僕をしばらくここに置いてはいただけないでしょうか……」  両手を胸前で合わせ、ひどく神妙な顔付きでそう頼み込まれて、遼二と紫月は唖然としたように顔を見合わせてしまった。 「や、別に構わねえけどさ……。あんた、親とかに連絡しなくていいわけ? 家の人とか心配してんじゃねえの?」  白帝学園に通うくらいだから良家のお坊ちゃんであることは間違いない。先程聞いた話では、実の両親ではなく伯父夫婦に育てられたということだが、それでも一応建前は”息子”なのだろうから、行方不明だなどということになったら心配しないではいないだろう。  警察に捜索願いなど出されて大事(おおごと)にならないとも限らない。そう思って一応尋ねたのだが、倫周は真っ向から否定するように、ブンブンと首を横に振ってみせた。 「家には……連絡しないで……。もう、あの家には帰りたくないんです……。帰ったら……」  今度こそどんな目に遭わされるか分からない――!
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