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謎の”朱雀”
――楽しいはずの新学期だった。
悪友たちとも離れずに同じクラスになることができ、高校最後の一年間を思い切り謳歌できるはずだった。だが、ここ最近、何とも憂鬱な空気が彼らを押し包んでいることに、誰もが少々気の滅入る思いで過ごしている――その原因は一之宮紫月の変化だった。
四月も半ばを過ぎ、そろそろゴールデンウィーク間近という、本来は心躍る時期に何とも重苦しい空気が流れている。遼二をはじめ、四六時中を共にツルんでいる剛や京が揃って首を傾げる程に、ここ最近の紫月の様子がおかしいのだ。
いつもならば当たり前のように連れ立って帰る下校時も覇気がなく、ともすれば紫月一人だけで先に帰ってしまったりと素っ気ない。会話も少なくうわの空で、放課後の付き合いもめっきり減ってしまっている。
今日も違わず、授業が終わると同時にいつの間にか姿を消してしまった紫月に、遼二ら残された仲間たちは訝しげにしていた。
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