私立四天学園

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私立四天学園

「しっかし、良かったよなぁ! このままクラス替えなしで三年に上がれるっつーことになってさ」 「ああ、おめえらと離れちまったんじゃ、せっかくの高校生活、ラスト一年が台無しだもんな」  始業式を終えたばかりの春四月、商店街のアーケードを練り歩きながら会話を弾ませているのは四天学園という男子校に通う三年生の面々だ。地元では『札付きの(ワル)が集まる高校』などと噂されている、ここいら界隈ではちょっとした有名校である。  そんな噂に(たが)わず、生徒らの誰をとっても一見にして褒められた風貌揃いではないが、いざ中に入ってみると案外気のいい連中が多かったりもするらしい。  つまり、当の彼らにしてみれば、単に色気付きたい年頃なのであって、見てくれが多少派手に映るだけで、世間から不良揃いなどと指差される筋合いではないというのが言い分らしい。  が、その一方では『男は力。弱いよりは強くて怖がられるくらいの存在』というのも、さして悪い気はしないらしく、名のある不良校というレッテルも満更ではないらしい。
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