兄が語る、弟の過去

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妹が行儀見習いから帰ってきた後は、俺も、一番上の弟も、遠方地に配属されて、家を出ていました。 それもいけなかったのかもしれません。 俺達がもっと早く、マキシミリアンの様子に気づいていたのならば、マキシミリアンは、弟は、辛い思いをせずに済んだのかもしれないと。 全て、結果論にしか過ぎませんが。 一番上の弟が婿入りの縁談を受けて、家を旅立つ事になった時も、マキシミリアンは帰ってきませんでした。 その数日後、マキシミリアンはドラゴン討伐の任務を受けて、騎士団の宿舎を出発したそうです。 俺達がマキシミリアンを、ドラゴン討伐の任務中に亡くなった事を知ったのは、逃げ帰ってきたマキシミリアンと同じ部隊の騎士達が戻ってきた時でした。 その時の両親の慟哭に違和感を抱いたのは、俺だけではありませんでした。 マキシミリアンの死を聞いて、一時的に帰省した一番上の弟と妹も思ったそうです。 ーーこの両親の愛情は、狂っていると。 マキシミリアンに執着するような嘆き、今まで放任した事を否定するような言葉の数々を、両親は口々に告げました。 俺達兄弟は、両親に振り回されていたんじゃないかと。 子供とはそういうものかもしれません。 両親が干渉するのが当たり前、放任するのも当たり前だと。 しかし、本当に愛を欲した時に与えられず、求めていない時に与えられる愛を、果たして本当に愛と言えるのでしょうか? 抱きしめられたい時に、抱きしめられなかった。 褒めて欲しいとやってきた時に、褒めてもらえなかった。 挨拶を言ったのに、挨拶を返してもらえなかった。 それを当たり前だと学んでから、掌を返したように、あの時に求めていたものを与えられる。それも必要以上に、 それを苦痛に感じていたのでしょう。 大切な弟は。
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