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「両親の過保護が酷くなってきた辺りから、マキシミリアンは笑わなくなりました。いつも、何かをグッと堪えているような顔をするようになりました」
「そんな、ことが……」
「マキシミリアンが必要以上に、騎士団、それも仲間達の輪に溶け込もうとするのは、おそらく、居場所が欲しかったんです。安心して、自分を晒け出せる場所が」
俺達では力不足でしたから、と、クリスの実兄は苦笑した。
「だからこそ、貴方とーーアメリアさんやコハクちゃんと、一緒にいるマキシミリアンを見た時に、兄として、とても安心しました。ああやって、笑っている弟の姿を見れた事が。ようやく、居場所を得られたのだと」
「そ、そんなこと……」
アメリアが戸惑っていると、実兄は頭一つ分背の低いアメリアと、目線を合わせるように屈んだのだった。
「貴方の噂は聞いています。彼の国が異世界から召喚した、異世界からの客人である事は」
アメリアは驚きで目を見張る。実兄は、何でもないことのように続けた。
「彼の国で二番目に召喚された客人は、自らの使命を果たして、無事に元の世界に帰っていったそうです。国王からの縁談を跳ね除けた話は、今や武勇伝として語られています」
「そ、そうなんですか!?」
アメリアは、自分と同じように異世界から召喚されてーーアメリアが出来なかった国の救世主となった、女性を思い浮かべた。
無事に使命を果たし終えて、第一皇子との縁談を跳ね除けて帰れたのか、と。
「貴方も、いずれは自分の居た世界に帰りますか? いえ、帰りたいと願っていますか?」
「どうして、そんな事を聞くんですか?」
アメリアが驚きで目を見開いていると、実兄は柔らかく微笑んだ。
「俺は、今でこそ、父上の跡を継ぐ為に騎士団を辞めてしまいましたが、今もまだ騎士団時代の繋がりがあります。それを使えば、貴方を元の世界に返す事が出来るかもしれません」
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