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「何を言っている。マキシミリアンもいい歳だろう。それに相手からは、男なら誰でもいいと言われているーー跡継ぎを作れそうな、男ならな」
その言葉に、クリスはさっと服の上から鱗に触れたーー今日は長袖と長ズボンを着ていた。のだった。
「相手の女性も、少々問題のある女性らしくてな……。女性としての機能はあるらしいが、見た目が」
「父上、私は縁談を受けません」
クリスの言葉に、一番驚いたのは母親であった。
「な、なぜ!? 相手はマキシミリアンが縁談を受けてくれるのなら、騎士団に復職させてくれるそうよ。それも、前より高い役職につけてくれると……」
「それでも、私は受けません。私は」
クリスは立ち上がると、アメリアの右肩に手を乗せた。
「私は、アメリアとコハクと三人で暮らしたいんです。これからも」
「マキシミリアン!」
母親がテーブルを叩いた拍子に、テーブル上の食器がガチャと音を立てた。
その音に驚いたコハクが泣き出すと、何故かコハクの近くに座っていたクリスの実兄が、コハクを抱き上げて、あやし始めたのだった。
「ここには、今日が最後と思ってきました。私はもう、ここには戻って来ません。私の事はーーマキシミリアンの事は、これまで通り、死んだということにして下さい」
そうして、クリスは礼をすると部屋から出て行ったのだった。
「クリスさん!」
アメリアはクリスが出て行ったドアと、未だクリスの実兄にあやされているコハクを見比べながら、どちらを優先したらいいのか逡巡した。
すると、アメリアの視線に気づいた実兄が、クリスを追いかけるように手で示した。
アメリアは頷くと、部屋を出て、クリスを追いかけたのだった。
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