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「コハクちゃ〜ん!」
アメリアが呼びかけながら、屋敷内を歩いていると、唯一、コハクが通れるくらいの隙間が開いているドアがあった。
アメリアがそのドアを開けて、そっと中に入ると、そこは絵を集めた部屋になっていた。
その中に飾られていた一枚の絵の前に、コハクは佇んでいたのだった。
「コハクちゃん!」
「あっ、ママ〜!」
アメリアが呼びかけると、コハクはタッタッタと駆け寄ってきた。コハクを抱き止めると、アメリアは抱き上げたのだった。
「ダメでしょう。勝手にいなくなったら」
「ママ、これみて!」
コハクが指した先を見ると、それは今までコハクが見入っていた一枚の絵だった。
先程のクリスの両親と、クリスの実兄、会った事はないが、クリスの実兄と同じくらいの背丈の青年と、青年よりも頭一つ分程、背の低い、花のような笑みを浮かべる女性もいた。
この二人が、実兄の言っていたクリスの二番目の兄と歳の近い姉なのだろう。
「ママ、パパがいる!」
その女性の側には、女性くらいの背丈の青年が立っていた。
その男性は無表情で、むっつりとした視線をアメリア達に向けてきたのだった。
「この青年が……クリスさん?」
その時、ガチャとドアが開く音が聞こえてきた。
「そうですよ。今から、二年くらい前に書いてもらった家族絵ですね」
アメリアが振り向くと、丁度、クリスの実兄が部屋に入ってきたところだった。
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