マキシミリアンの生家

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マキシミリアンの生家

「おっきいね!」 「そうね。コハクちゃん……」 馬車に揺られる事、三日。 ようやく到着したクリスの実家は、アメリアの予想をはるかに上回る大きさの屋敷だった。 まず、庭が広い。ついで、門から玄関まで馬車に乗らないと、かなり距離があった。 それ自体に、アメリアは驚いていたのだった。 そんなアメリアに対して、馬車から荷物を降ろしていたクリスは呆れたように返したのだった。 「これでも、この辺りでは小さい屋敷だ。うちは下級貴族だからな」 「か、下級貴族!? クリスさんって、お貴族様だったんですか!?」 アメリアは飛び上がらんばかりに驚いたが、クリスは不思議そうに首を傾げただけだった。 「貴族って言っても、下から数えた方が早い下級貴族だ。王宮に上がる事や王族との拝謁さえ許されていない末端だ」 クリスは出迎えてくれた使用人達に荷物を預けると、アメリア達を誘って屋敷に入っていったのだった。 アメリア達が屋敷に入ると、すぐに年配の男女が出迎えてくれた。 仕立ての良い洋服や高価なアクセサリー類から、この二人がクリスの両親だとすぐにわかった。 「マキシミリアン!」 「母上……」 戸惑っているクリスに、クリスの母親は抱きついてきた。抱きついた拍子に、ラベンダーの様な甘い香りが周囲に広がった。 「こんな姿になって……。マキシミリアン……私の息子……」 「無事だったんだな。元気そうで何よりだ」 「母上、父上」 抱き返すクリスの、鱗に覆われた左顔から、雫が一滴、滾れ落ちた。 それを見なかった振りをしたアメリアは、傍らにいた筈のコハクの姿が見えない事に気づいた。 「あれ? コハクちゃん!?」 家族との再開でコハクとアメリアの様子に気づいていないクリスを置いて、アメリアはその場をそっと離れたのだった。
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