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現在
「あの~、そろそろ頭を上げて貰えません?
そのぉ、私もサスガに足が痺れてきたって言うか…」
「やだ」
「うぇぇっ、即答!?」
「ああ。
今ちょうど首の角度がいいからな」
「………!」
「………!」
広いリビングに2つ揃えてあるソファ・セット。
ここから斜め向こう側にあるその1つから、賑やかしいやり取りが聞こえてくる。
もうひとつの方のソファに寝転がって音楽を聴いていたボクは、その甲高い声に、すっかり集中力を削がれてしまった。
ボクは聴いていた音楽を諦め、耳からイヤホン外して、今、その様子を眺めている。
さっきから向こうのソファでイチャついているのは、ボクの兄貴の貴彪と、その奥さんの美咲ちゃん。
二人はちょうど半年前に、結婚式を挙げたばかりの新婚さんだ。
あーあ。
貴彪、天下の藤城総帥が、ヨメ相手にあんなにデレた顔しちゃてさあ?
その面、いっつも仏頂面で偉そうに叱ってる、テメエの配下に見せてやりてえよ。
いっそユー○ューブにでも動画配信してやろうか?
まあ、気持ちは分からんでもないけどね。
確かに美咲ちゃんは真っ正直すぎるから、からかうのは面白い。
でも、その美咲ちゃんだってさ。
目をつけたのは俺の方が先だったんだぜ?
もしかしたら、あの幸せそうな表情も笑い声も、ボクのモノだったかもしれないのに、それを横からかっ拐いやがって。
そうだよ、貴彪(アイツ)は昔っから。
ボクが欲しいモノは全部、何でもかんでも奪っていく、そんなムカつく奴だったんだ_____
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