現在

1/1
前へ
/23ページ
次へ

現在

「あの~、そろそろ頭を上げて貰えません? そのぉ、私もサスガに足が痺れてきたって言うか…」 「やだ」 「うぇぇっ、即答!?」 「ああ。 今ちょうど首の角度がいいからな」 「………!」 「………!」 広いリビングに2つ揃えてあるソファ・セット。 ここから斜め向こう側にあるその1つから、賑やかしいやり取りが聞こえてくる。 もうひとつの方のソファに寝転がって音楽を聴いていたボクは、その甲高い声に、すっかり集中力を削がれてしまった。 ボクは聴いていた音楽を諦め、耳からイヤホン外して、今、その様子を眺めている。 さっきから向こうのソファでイチャついているのは、ボクの兄貴の貴彪(たかとら)と、その奥さんの美咲(みさき)ちゃん。 二人はちょうど半年前に、結婚式を挙げたばかりの新婚さんだ。 あーあ。 貴彪(アイツ)、天下の藤城総帥が、ヨメ相手にあんなにデレた顔しちゃてさあ? その面、いっつも仏頂面で偉そうに叱ってる、テメエの配下に見せてやりてえよ。 いっそユー○ューブにでも動画配信してやろうか? まあ、気持ちは分からんでもないけどね。 確かに美咲ちゃんは真っ正直すぎるから、からかうのは面白い。 でも、その美咲ちゃんだってさ。 目をつけたのは俺の方が先だったんだぜ? もしかしたら、あの幸せそうな表情(かお)も笑い声も、ボクのモノだったかもしれないのに、それを横からかっ拐いやがって。 そうだよ、貴彪(アイツ)は昔っから。 ボクが欲しいモノは全部、何でもかんでも奪っていく、そんなムカつく奴だったんだ_____
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加