89人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
それからほどなくして、貴彪の乗った車が、事故を起こしたというニュースが飛び込んできた。
ボク等には当時、それぞれにお抱えの運転手がいて、登下校は彼らの運転による自家用車だった。
ボク達の通う学校では、別段珍しくもないことだ。
故障した車による自損事故で、貴彪は半身不随になったということだった_____
後藤田からこのニュースを聞かされた時は、正直戸惑った。
だってもう、てっきり跡取りは貴彪と決まったって考えていたから。
が、同時に、心が踊らなかったといえば嘘になる。
だって、莫大な財産も、命令を聞く人間も、そしてあのフワフワの天使みたいな女の子、瑠璃子お嬢さんも、父の期待も、自動的に全部ボクのものになるんだ。
後藤田は、しきりに“重責だ”とか、“これからはより一層の努力を”とかボクに説いたが、そんなことは、ひとつも考えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!