90人が本棚に入れています
本棚に追加
「さあ、どうした将馬よ。貴彪が嘘をついているのか?
それとも何か…思い当たるふしでもあるのか」
父の声が頭の中にぐわんと響く。気持ちが悪い。気分か悪くなってきた。
貧血たろうか、フラりと目眩を感じたその時だった。
「お待ちください。
_____総帥。先ほど貴彪様が仰ったのは、全て真実でございます」
ボクの後ろに控えていた後藤田が、一歩前に進み出た。
「…後藤田。なぜお前にそれが解る」
「_____はい。それは…それは私が、私が全て画策していたことだからです。
将馬様は、何も存じ上げません」
ザワッ。
周りにいた大人達がざわめいた。
一体、ナニヲイッテイルノ?
ボクは、さっきよりもっと気分が悪くなってきた。
貴彪は、相変わらず何の感情もみせないまま、冷然と状況を見据えている。
後藤田は、どうしてもボクを後継者にしたかったこと、今のままではボクに分が悪く、焦っていたことなどを父に切々と述べた。
その上で、今でもまだ、貴彪よりボクが後継に相応しいと考えていると、父に強く訴えた。
後藤田が罪を白状し、別の大人達に部屋の外へ連れていかれるまでの間、ボクは、言葉を発することさえ出来なかった。
「将馬。お前は、すぐ近くの人間が何を考えて動いているのかさえ、見えていないのか」
父はボクに吐き捨てるように言い、対して貴彪には、すこぶる機嫌良く、お褒めの言葉を授けた。
「貴彪、流石だな。組織を統べる者ならば、常に用心深くなければ。時には味方だと思っていた部下さえ、信じられないこともある」
父がチラッと、貴彪の守役だった男に目をやると、彼は恥ずかしそうに顔を伏せた。
結果は、貴彪の完全勝利だった。
最初のコメントを投稿しよう!