過去

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「さあ、どうした将馬よ。貴彪が嘘をついているのか? それとも何か…思い当たるふしでもあるのか」 父の声が頭の中にぐわんと響く。気持ちが悪い。気分か悪くなってきた。 貧血たろうか、フラりと目眩を感じたその時だった。 「お待ちください。 _____総帥。先ほど貴彪様が仰ったのは、全て真実でございます」 ボクの後ろに控えていた後藤田が、一歩前に進み出た。 「…後藤田。なぜお前にそれが解る」 「_____はい。それは…それは私が、私が全て画策していたことだからです。 将馬様は、何も存じ上げません」 ザワッ。 周りにいた大人達がざわめいた。 一体、ナニヲイッテイルノ? ボクは、さっきよりもっと気分が悪くなってきた。 貴彪は、相変わらず何の感情もみせないまま、冷然と状況を見据えている。 後藤田は、どうしてもボクを後継者にしたかったこと、今のままではボクに分が悪く、焦っていたことなどを父に切々と述べた。 その上で、今でもまだ、貴彪よりボクが後継に相応しいと考えていると、父に強く訴えた。 後藤田が罪を白状し、別の大人達に部屋の外へ連れていかれるまでの間、ボクは、言葉を発することさえ出来なかった。 「将馬。お前は、すぐ近くの人間が何を考えて動いているのかさえ、見えていないのか」 父はボクに吐き捨てるように言い、対して貴彪には、すこぶる機嫌良く、お褒めの言葉を授けた。 「貴彪、流石だな。組織を統べる者ならば、常に用心深くなければ。時には味方だと思っていた部下さえ、信じられないこともある」 父がチラッと、貴彪の守役だった男に目をやると、彼は恥ずかしそうに顔を伏せた。 結果は、貴彪の完全勝利だった。
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