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…負けたよ。 そうか。真正直は、逆に彼女の武器なんだな。裏切れば、ボクの方の良心の呵責が半端ない。 例えばボクみたいな小狡い小悪人にでも、 “そんなことで、この信頼は失いたくない”と思わせてしまう力がある。 さては、貴彪(あいつ)も、これにやられたんだな。 「何でもない。 かして。貴彪(それ)、寝室まで運んでやるよ」 「エ、いいの? でも…けっこう重たいですよ、貴彪さんは」 「アハハ… 大丈夫、大丈夫。 こう見えてもボク、土方のバイトもやったことあるし、脱いだらスゴいヒトだから。 …見る?」 「いえやめときます。 じゃ、お願いしまーす」 前言撤回。 やっぱこの嫁、けっこうシッカリしてるわ。 シャツのボタンをはずしかけた途端に即答され、心を折られながらも、ボクは彼女から貴彪を引き剥がし、なんとか背中に背負い上げた。 う、重い。
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