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クスッ。
ボクは、急に可笑しくなった。
確かに、貴彪、普段から仏頂面だし、人に愛されるタイプではないよな。
「どうしたんですか?」
「え…あ、ああ」
ふと気がつけば、隣にいた美咲ちゃんが、ボクを覗きこんでいる。
「何かすごく、楽しそうな顔してましたよ?」
「うーん、ちょっと。昔のことを思い出してて、ね。
…ねえ、美咲ちゃん」
「はい?」
キョロリと目を向けた彼女に、ボクはひとつ、訊ねてみた。
「初めて貴彪と会った時、第一印象ってどんなだった?」
「エッ、そ、そりゃあ…」
彼女はボクの背中の方を、しきりにチラチラに気にしている。
「ふふっ、“怖かった”だろ?」
彼女は、慌ててシーッと口に指を当てた。
「た、貴彪さんにはナイショですよ。……そのうえ、かなりイジワルでした」
「ははっ、そうだろ?ボクも同じ、そう思ってた!
アイツさ、酷いんだよ。ボクら、5歳くらいの時に会ったんだけどね?遊んでる時にあの、庭の大きな栗の木の_____」
「えー、それはひどすぎます!
………」
それからボクらは、貴彪の過去の悪行の数々にひとしきり花を咲かせながら、ゆっくり、ゆっくりと寝室まで向かっていった。
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