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ある日。
ボク達の遊びの時間(と言っても、二人仲良く遊ぶことなど殆どない。大人の前でだけボク達は、叱られないように仲の良いふりをしていた)に、父がやって来た。
1人ではない。別の大人数人と守役の二人の部下。そして、小さな女の子を伴って。
それぞれに背を向けて、別の遊びをしていたボク達は、慌てて向かい合って座って、楽しそうなふりをした。
「瑠璃子と言います。よろしゅうに」
背の高い、黒髪の若い男に手を引かれたその女の子は、柔らかな京言葉で挨拶した。
すると、珍しく機嫌の良い父が豪快に笑った。
「アッハッハ。いずれお前達どちらかが、この子と結婚するんだ。
お前達も、仲良くするようにな」
そのあと、大人達が向こうで立ち話を始めたから、僕らは3人で遊び始めたのだけれど…
“ケッコン” だってさ。
ボクの中に、何とも言えないくすぐったい感覚が駆け抜けた。
フワフワとした、砂糖菓子みたいな女の子。
ボクと違って、やーらかい。ちょっと触ったら壊れてしまいそうなのに、ずっとニコニコと笑っていて、ちょうどこの間、絵の本の中で見つけた天使のよう。
横を見ると、いつもは乱暴な貴彪もこの日ばかりはいやに大人しい。
そうして、ボクと同じようにちょっとだけ顔を赤くしている。
…ふうん、何だよ。
コイツもか。
僕の中に初めて闘争心が芽生えた。
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