1章 ただの同期です

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確かに華原は美人だ。 同期の中でも、それは群を抜いていると言える。 まだ新人だった頃、華原の存在はある意味で浮いていた。 十人に聞けば、十人が美人と答えるであろう整った顔立ち。身長も女性にしては高い方で165センチあるらしく、すらりと伸びた手足と、細身の身体に似合わず、出るとこは出た理想的な身体の持ち主で、入社当時から男性社員の注目の的だった。 そんな石堂自身も、初めて紫を見た時、一瞬息をするのも忘れてしまうほど彼女に見入ってしまった過去がある。 けれど、それも昔の話だ。 「あんな美女と二人暗闇の中にいれば、普通の男はそのままホテルに連れ込むパターンだろ」 当然のように言い切る岩本に、石堂は呆れたように言った。 「……お前、よくそんなキャラ周りに隠してるな」 「そりゃあ、一応は人事所属だし? でも、俺だって会社を離れればただの男だ」 お前が羨ましいよ、と言いながら、岩本はなおも続ける。 「いいよなぁ、華原。お前がいなけりゃ、俺が狙ってたんだけどなぁ」 「……何で俺が関係あるんだ?」 「お前が、いつだって華原を離さないからだろう? お前にとって、彼女が大切な存在であることに変わりないじゃないか」 「別に、華原が俺にとって特別なわけじゃない」 頑なに否定する石堂を横目にくっくっと笑いながら、岩本は到着したエレベーターに乗り込んだ。
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