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『今日、いつものとこに19時でいい?』
つい数分前に社食ですれ違った彼──石堂帝(みかど)から、スマホにメールが届いた。
『うん。今日は定時で上がれそうだから大丈夫』
そう直ぐに返事を送りスマホをテーブルに置くと、紫(ゆかり)の向かいに座る同期の栗山聡子(さとこ)が顔をにやつかせながら言った。
「もしかして、石堂くん?」
「……そうだけど」
何がそんなに嬉しいのか、聡子はますます笑みを深くする。次に言われることは分かっていた。
「やっぱりさ、あんたたち……」
「付き合ってないから」
紫は深い溜息をついた。
もう何度同じ台詞(せりふ)を口にしただろう。しかも、相手は聡子だけではないのだ。
どういうわけか入社当時からずっと、同期の石堂と自分は付き合っているんだという噂が絶えない。
「何度も言ってるけど、石堂と私はただの同期。それ以上でも以下でもないの」
「紫、それ本気で言ってるの?」
「当たり前。石堂だって、否定してるはずだけど?」
「いや、単なる照れ隠しだって皆思ってるよ。だってあんたたち、誰が見たってラブラブのカップルにしか見えないよ?」
「……どこが?」
全く意味が分からない。社内でいちゃついてるっていうならまだしも、ただ顔を合わせれば会話をして、こうして時々メールしたりする。それだけなんですけど?
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