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「華原は何も悪くないよ。笑い過ごせばいいのに、俺が変な態度取ったから……」
「ううん、悪いのは私だから」
「違うって。……第一、俺は塚本さんと付き合っていたわけじゃないし。堂々としてりゃいいんだよな」
「そう言えばそうよね。でも、これ以上この話はしたくないってあの時石堂が言っちゃったから、大半の人は塚本さんが石堂の元カノだったって、今でも思ってると思うけど」
「確かに……」
さっきの同期の仲間たちの反応を見ても、誤解しているやつらが多いんだということが分かる。
とは言っても、今更何年も前の話を穿り返して弁解したところで、何の意味があるのか。自分にとっては忘れたい過去で、一瞬たりとも思い出したくない。
今ではそのことを噂する人間だっていないのだから、このまま触れない方が得策のように感じる。
「まぁ、別にいいんじゃない? 塚本さんはもう会社にいないんだし、今更あの時の話を話題にするような人もいないって!」
大丈夫と笑う華原に軽く肩を叩かれ、自分よりも男前の彼女に苦笑が漏れた。
「男の面子が立たないな」
「え? 何か言った?」
「……いいや。ありがとな、華原」
頼りになる同期を持って本当に良かった──そう、心から思った。
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