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「他の同期と何も違わないと思うけど……」
「いやいや何言っちゃってんの。全然違うでしょ!」
聡子が勢いよく目の前の海老カツにぐさっと箸を刺した。
「聡子、何そんなに興奮してんの? あと、日本語、変だよ……」
「おだまりっ!」
思いのほか聡子の声が食堂に響き、周りの目が一気に自分たちへ集中する。当の聡子もさすがに恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしながら俯けた。
「カフェに行く?」
仕方なく助け舟を出すと、聡子は気まずそうにうんうんと頷いた。
*
自社ビルの三階にはスタバほどではないが、価格が良心的で種類もそこそこ豊富なカフェがあり、社員にとって食後や休憩時間の憩いの場になっていた。
コーヒーを二つ注文して、窓際の席に座る。と同時に、聡子がまた先ほどの話を持ち出してきた。
いつものことながら、彼女はしつこい。どうしてこんなにも「同期カップル」とやらを誕生させるのに必死なのだろう。
「さっきの話だけど。ただの同期が、そんな頻繁に二人で約束取り付けて出かけたりしないって!」
「頻繁ってほどじゃ……。一週間に一回程度だけど」
「それ、十分だから。私なんて彼氏と、二週間に一回会えればいいほうだよ? 社会人カップルなんてそんなもんよ。どう考えてもあんたたち、同期の域を超えてるって!」
「そうかなぁ……」
紫は納得できない気持ちを持て余しながら、コーヒーカップに口をつけた。
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