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微妙な空気で幕を閉じた同期会の日から、気づけば3週間──紫と石堂の間に、ある変化があった。それは──……
「石堂くんからずっと連絡がない?」
「……そう」
いつものランチタイム。紫は真剣に、聡子に相談をしていた。
これまでほぼ毎日、何かしら連絡を取り合っていた紫と石堂だが、ここ数週間全く連絡を取りあっていない。親しい付き合いをするようになってから、こんなに音信不通になったことはなく、病気で会社を休んでいるのかも──と紫は心配になったのだ。
「病気ってことはないと思う。だってさっき、エントランスで石堂くんとすれ違ったから」
きっと今から外回りなんだろうね。あっけらかんと、聡子は言った。
対照的に、それを聞いた紫は息を吐き出しながら、ソファーに身体を沈ませる。
「なんだー、会社にちゃんと来てるんだー。良かった、私の思い過ごしで」
「石堂くんが入院しようものなら、何かしら情報が入ってくるに決まってんじゃん。有名人なんだし」
「私だってそう思ったけど、深刻な病状だったら噂になりにくいかと思って。でも、元気なら良かった」
途端に笑顔になる紫に、聡子が不思議そうに尋ねた。
「そんなに心配なら、石堂くんに直接聞けばよかったのに。あんたたち、毎日連絡取り合ってたんじゃないの?」
「そうだけど……」
「喧嘩でもした?」
「してないよ。でも、今回気づいたことがあって……。私ね、これまでいつも石堂が連絡をくれていたから、私から連絡をしたことがなかったの」
「え、そうなの?」
紫は黙って頷く。自分ですら、最近気づいた事実だ。
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