3章 変化

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「急な話で本当にごめんなさいね。谷川本部長に今ついている秘書の鈴木さんが、急に会社を退職されることになったらしいの。それで後任を急ぎ探してほしいと言われて……」 「それで、私を?」 「えぇ。華原さんは役員秘書の経験もあるし、何より仕事が早いから、多忙な営業統括部門でもきっと活躍できると思ったの。どう? 引き受けてくれるかしら?」 「……分かりました。ちょうど今の仕事も後輩に引き継いだばかりですし、二週間後でも問題ないと思います」 きっと、その辺りのことも考慮されての人事異動だろう。 万里子は笑顔で「よかったわ、ありがとう」と言いながら、紫の手を取った。 「さっそく谷川本部長に挨拶に行きましょう」と言われ、紫は万里子とともに営業フロアへ向かう。どうやら本部長のスケジュールが今空いている時間らしい。 歩きながらふと、石堂のことを思い出した。 (営業部なら、石堂も同じフロアにいるってこと……?) 谷川本部長の話は、何度か石堂の口から聞いたことがある。 仕事にはとても厳しい人ではあるけれど、休日は若手社員に混ざってフットサルをしたり、偉ぶることなくとても素朴な人であると。 その話をしている時の石堂はいつも楽しそうなので、谷川本部長の事を慕っているのだと思う。
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