4章 嵐を巻き起こす男

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「石堂さん、3番に有栖川商事の上山様からお電話です」 「ありがとう。すぐに対応する」 営業部に異動して分かったことがある。想像以上に、ここの部署は忙しい。その中でも特に、石堂は群を抜いて案件を多く抱えているらしい。 それを教えてくれたのは、新しく紫が秘書としてついた谷川本部長だった。 「華原さんも営業の一員になるわけだから、うちの仕事のことも少し知っておいた方がいいよね」 そう言って、営業部が今抱えている案件、契約規模や営業担当の情報を簡単に説明してくれた。 その中で気づいたのは、石堂の名前が多く聞かれたこと。谷川本部長いわく、石堂は要領もよく作業が速いため、どうしても仕事が集中してしまうそうだ。 「うちの一番の有望株だよ」と笑いながら、「そんな彼には、ちゃんと彼の事を理解してくれる、いい人がいてくれればいいんだけどね」と言っていた。 なぜか、紫のことをちらちら見ていた谷川本部長は、石堂と自分の噂を知っているのだろうか。 (まさか、役員の耳にまで入っているの……?) それ以上踏み込ませませんよ、という意思表示を込めて、紫は薄い笑みを浮かべた。 立場のある人間は、こうすればそれ以上踏み込んでこようとはしない。 今や簡単にセクハラとして訴えられてしまうご時世。せっかく得た地位を、みすみす手放したくはないということだ。
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