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こちらの思惑通り、谷川本部長はそこで話を切り上げた。
本部長室はガラス張りの造りなので、中から社員の働く様子がよく見える。
石堂は、先ほどからひっきりなしに電話対応をしているようだ。終わったと思ったら、すぐに次の電話が鳴る。それはお昼休みも同様だった。
「石堂、ランチ行かないの?」
お昼休み開始の鐘が鳴り、時間が少し経ってから立ち上がった時、フロアにはまだ半分程度の社員が残っていた。
その中に石堂がいたので声をかけたら、彼は少し驚いていた。
「鐘、鳴った?」
「とっくにね。私ですら、5分遅れくらいだけど」
「……そうか」
「お昼、行くなら一緒に行かない?」
聡子も一緒だけど。そう付け加えると、石堂はデスクの上の書類を少し眺めて、小さく首を振った。
「今日はやめとくよ。15時から外出だし、それまでにこの山、片付けたいから」
「……そっか。お昼あるの? 何か買って来ようか?」
「後で適当に買うからいいよ。サンキュー」
そう言って石堂は、すぐに作業に戻った。
ただひたすら目の前のディスプレイと向き合う石堂には、これ以上何を言ってもムダらしい。
紫は諦めて、一人食堂へ向かう。偶然エレベータを降りたところで聡子と一緒になり、石堂のことを話した。
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