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「じゃあ聞くけど。石堂くんは、何でそんなに紫を誘うの」
「同僚を誘っちゃ、何かマズイわけ?」
「私、誘われたことないけど」
「何、栗山は俺に誘われたいの」
「だから、そういうことが聞きたいんじゃないの、こっちは! 紫ばっかり頻繁に誘う理由は? って聞いてんの。社会人カップルなんて、週一でさえ会えないもんなのに。ただの同僚が、毎週プライベートで会う理由がどこにある!?」
「そんなこと言われてもなぁ……」
やっぱり石堂も同じだと、紫は安心した。
理由なんてない。ただ、居心地がいい、それだけなんだ。
恐らく他人には理解できないだろう。ややこしい恋愛感情がないからこそ成立している、今の二人の関係を。
紫がそうであるように、石堂も紫に“異性”を感じていないのだ。
紫がそう安心しきった時だった。
「石堂くんは紫と二人でいる時、その身体に異変はないわけ!?」
聡子はそう言って、石堂の下半身をちらりと見やる。
ちょうどカップに口をつけていた紫は、ぶほっと豪快にむせると、そのままごほごほと咳き込んだ。
「ちょっ、な……に、言って……!」
「紫は黙ってて。私は石堂くんに聞いてんの」
ふざけている様子は微塵もなく、聡子の目はマジだ。
けれど、昼休みに相応しい話題とは言えない。こんな話、誰かに聞かれでもしたら……!
周囲をきょろきょろ見回す紫に、隣の石堂が呆れたように笑う。
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