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女心がわかる男は、モテる?
「……おい?そっち、大丈夫か?」
歩き去るマナミちゃんの背中を見遣りながら、工藤が話しかけてきた。
「……何が?特に問題ないだろう?さっきの見ただろう?マナミちゃん……俺の事、指したの」
今日が、初めての合コンだった。元々、女性と会話をする事が苦手な俺が、マナミちゃんのような女性と接する事が皆無に近い。何を話題にすれば良いのか、何をすれば好まれるのか……意識 すればする程、自分をさらけ出す事に臆病になる。だが、あんなに可愛い子にアプローチされたら、男として舞い上がるに決まってるだろう?マナミちゃんは、俺に気があるに違いない。
「あんまり盛り上がらないなら、俺がもらっちゃうぞ?」
保育士に聞こえないように、俺の耳元で工藤が囁いた。顔を上げ、工藤の顔を見ると満面の笑みを向ける。
「……俺が主役なんだろう?第一、お前みたいなタイプが、マナミちゃんみたいな清楚系に相手される訳ないね」
「……どうかな?お前はまだ何にもわかってないな……まぁ、いいや。そろそろ、俺も攻めようかね」工藤のような女性に慣れた男に、俺が敵う筈がない。
「……お前、まだ連絡先聞いてないよな?」
「……あぁ」
合コンが始まる前に、工藤からアドバイスをもらった。気になる子がいたら、必ず連絡先を聞けと。ただ、タイミングや話の切り出し方の術を持たない俺には、余りにも高いハードルだった。軽く、『ライン、交換しよう?』で良いんだと工藤は言ったが、マナミちゃんの前では、妙に緊張する。
そんな会話をしていると保育士が、「何、こそこそ話しているんですか~?私の事、二人とも狙っているんでしょ?」と酔っ払った様子で、的外れな事を言ってきた。
何を言っているんだ、こいつ……梅のくせに。
内心そう思ったが、工藤は違った。
「そうだよ~、マリちゃん。よくわかったね?」
先程まで俺に見せた顔色と異なり、一気に明るくなり驚いた様子を工藤は見せた。
その変わりように呆気に取られていると、マナミちゃんが席に戻ってきた。マナミちゃんは戻ってきて早々に、グラスを空けて日本酒をロックで注文した。
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