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聞き上手は、モテるのか?
運ばれてきた日本酒の入ったグラスを、口に運ぶマナミちゃんの姿は、先程までとは雰囲気が違った。一口運ぶ度に変わりゆく可憐な印象は、崩れ落ちていった。
「……佐藤さんだっけ?私の話、聞いてくれる?」
「……えっ?あっ、あぁ」
そこから酔っ払い、くだを巻くマナミちゃんの話に耳を傾けた。上司のセクハラや給料の少なさから始まり、昔付き合った元彼の悪口など、その話は見た目とはかけ離れた粗っぽい印象だった。話が一段落すると、日本酒をおかわりするマナミちゃんを制した。
「これ以上は、止めた方が……」
立ち上がり、マナミちゃんが挙げている手を降ろそうと手を伸ばした時、「うるさいなぁ……ひっく。あんたみたいな男がね……私と釣り合う訳ないでしょ?」と振り払われた。
思いもよらない角度からの攻撃に、たじろぐ俺。呆然と立ち尽くしていると、工藤が立ち上がり近寄ってきた。
「マナミちゃん、大丈夫?ちょっと外の空気、吸いに行こう、ねぇ?」
言いながら、マナミちゃんの肩に手を伸ばし担ぎ上げようとする工藤。マナミちゃんはそれに抵抗する様子を見せず、工藤に体を預けた。
「……あとは、頼むぞ」
工藤が言い残し、その場を後にした。
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