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工藤とマナミちゃんは……
場の盛り上げ役である工藤がいない席は、閑散としていた。俺は初めての合コンで、勝手を知らない。鈴木は自分のペースを、崩す事がない。保育士は構ってくれていた工藤を失い、ハイボールを飲み続け、看護師は相変わらず食事の手を止めていなかった。
「……遅いな、二人共。マナミちゃん、大丈夫かな?」
沈黙に耐えきれず、何気無く呟いた。二人がいなくなってから、三十分は経っている。
「……戻って来ないと思いますよ?」
保育士が焼そばに箸を伸ばしながら、確かにそう言った。
「……はぁ?」
「二人で、もうどこかで仲良くイチャイチャしてるんじゃないですか?」
話終えると、一気に麺を啜る保育士。その食べ方に、やるせない思いを感じた。それに、イチャイチャって……嘘だろ?
「いや、それはないだろ?だって、マナミちゃん……あんなに酔っ払っていたしーーー」
「マナミのね……いつもの……やり方なんですよ」
口に焼そばを含みながら喋る保育士に、品を一切感じなかった。その姿が気になり、話の内容がなかなか頭に入ってこない。ハイボールと一緒に焼そばを流し込んだ保育士が、斜向かいに座る俺に向き直った。
「ああやって酔っ払ったフリをして、男に介抱させる……それで、その男を食べちゃうんです」
舌を出して、ふざけた顔を見せる保育士。「あっ……本当に食べるって意味じゃないですからね?」と深刻な表情を浮かべている俺に、慌てて否定した。それくらい、俺だって理解している。馬鹿にするのも、大概にしろ。
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