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果てしない食欲
「……はぁ」
去り行く二人の背中が消えると、大きくため息をついた。そして、斜向かいに座る看護師と二人っきりとなった。
さて……どうするか?
このまま大食漢といた所で、意味もない。タイミングを見て帰るか……帰りにコンビニに寄って、自宅で飲み直そう。そうだな……レンタルショップでDVD借りて、観ながら飲むのも悪くない。そう思った時だった。
「それ……食べていいですか?」
一瞬、俺に向けられた言葉だと理解出来なかった。だから無視をしたように、映ったのかもしれない。
「……あの」
ようやくそれが、看護師の俺に向けた言葉だと理解し、「うん?」と顔を向けると、看護師が俺の前に置かれている焼そばの皿を指していた。彼女の周りに置かれている食器は、既に平らげられている。
「……あぁ、うん……いいよ、はい」
彼女の前に皿を運んだ。他にもコースで注文した、シーザーサラダと鳥の唐揚げも一緒に運ぶ。
「サラダ……苦手何ですか?」
「……えっ!?」
「鈴木さん、マナミが取り分けてから食べてなかったですよね?」
「……どうして?」
看護師に対して、少し怖くなった。
確かにあの時は、マナミちゃんに対して断りづらく受け入れた。そう俺は、野菜類一切苦手だった。ドレッシングをかけた所で、克服出来るレベルではない。野菜独特の香りが苦手で、野菜ジュースは大丈夫だった。
「鈴木さんが言ってました……無理してるなって」
鈴木が?それに、違和感を覚えた。
「鈴木と話していた?君はずっと、食べてたばかりだろう?」
ふざけた様に俺が言うと看護師は、不貞腐れた表情を浮かべた。
「佐藤さんはマナミに夢中だったから、気付いてないだけですよ……結構、鈴木さんと喋りましたよ……例えば、音楽の事とか」
そう話ながら、箸を休める事無く唐揚げを食す看護師。
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