PartⅡ

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PartⅡ

 ジェミニ―は一文字に宇宙艇を飛ばして昼頃、ムーシャン星に着くと、即刻、プレゼントを買いに宝石店へ向かった。  以前、調べた時にティーボール星の女性はプレゼントとして宝石の指輪を贈られると大変喜ぶと知ったからだ。  途中で電気店の店頭に見慣れない商品があるのを見かけたり見慣れないファッションで着飾った人に行き交ったりして自分は時代に乗り遅れているのだろうかと疑懼し、自身がアナクロニズムに陥りながら宝石店に着いた。  で、彼はクレジットカードで買おうとしたが、期限が切れてますと店員に言われ、あれ、更新手続きを忘れたかなあと思いつつ現金を出して3カラットのダイヤの指輪を買った。そして急ぎ足で宇宙艇に戻って宇宙艇を発進させると、一直線にティーボール星へ向かい、翌朝、カスミがいた公園に帰って来た。しかしカスミが公園にはいなかったのでジェミニ―は赤い屋根の家に向かった。  家並みはオリエンタルだったりオクシデンタルだったりと様式も色調もばらばらで調和が取れていない。尚且つ電線や電柱や看板が目立ってごちゃごちゃしている。おまけに雑草がアスファルトの割れ目から所々に生えていて見苦しい。糅てて加えて排気ガスで空気が酷く汚染されている。未だにガソリン車が主流ということは景観のみならず文明もムーシャン星よりだいぶ劣っている。ジェミニ―はそう鑑定しながら赤い屋根の家の前に着いた。 「ピンポーン!」 「は~い!」  確かにあの声だ!とジェミニ―はときめいた。しかし、玄関から現れたのは50を優に超えた中年の女だった。 「あの、ジェミニ―と申す者ですが、カスミさんはいらっしゃるでしょうか?」 「私がカスミですが」と中年女が猶も若作りして言うと、「えっ!」とジェミニ―は叫んだ瞬間、腑に落ちた。「そうか、ウラシマ効果によって時間がずれたんだ!」  ジェミニ―の宇宙艇は超高度文明を誇るムーシャン星の多くの企業の先端技術を結集して開発製造された超高性能マシンでワープを繰り返すことで光の速度の一万倍の速さで移動することが出来るからムーシャン星からティーボール星まで往復5光年の距離を一日余りで通過することができるのだ。その間、ティーボール星では35年もの歳月が流れていた。 「私を覚えていますか?」 「えっ、どこかでお会いしましたでしょうか?」 「いつか宇宙艇で、あの公園にやって来たじゃないですか」 「はあ?」とカスミは怪訝な表情になったかと思うと、顔全体の皺を動かしてしかめっ面になり、「ちょっと、あんた!」と金切り声で叫んだ。  すると、カスミの旦那らしき布袋腹のトドみたいな中年男が奥の部屋から出て来た。 「どうした?」 「気違いが来てるんだよ」 「気違い?気違いってこの人のこと?」 「ああ、そうだよ、だってありもしない宇宙艇でどうのこうのなんて言って」とカスミが言い掛けたところでジェミニ―は慌てて外へ出て行った。宇宙艇に向かいながら彼は思った。 「僕のことを忘れてしまったのか・・・嗚呼、あんなに可憐だったのにティーボール星の女というものは年を取ると老いて醜くなる上に所帯染みて男を見る目がなくなり、おまけに夢のような出来事を幻として信じなくなり、糅てて加えてああも恐ろしく変わるものか・・・」  ジェミニ―はすっかり当てが外れてげんなりして宇宙艇に戻ると、3カラットのダイヤと共にムーシャン星に向かった。
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