蟋蟀

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「次、何食べさせるー?」 「あいつのコオロギにしようぜ? 授業中うるさくてうざい」 ガキ大将はコロちゃんを摘みあげた。私は止めようとした。 「このコオロギ、大事にされてるんだよ? やめようよ」 ガキ大将はそれを聞いた瞬間に笑い飛ばした。 「どうせ虫なんてすぐ死ぬんだから、勝手に死ぬのもカマキリに食われるのもあまり変わんねぇよ」 ガキ大将はコロちゃんをカマキリの入った虫かごに放り込んだ。カマキリは首を傾けて獲物(コロちゃん)を捕捉し、じりじりと躙り寄る。コロちゃんもぴょんぴょんと飛び回り逃げにかかる。 だが、瞬く間に虫かごの隅に追い詰められたコロちゃんは動きを止めた。 カマキリはコロちゃんを目の前にして急に動きを止めてしまった。 前まで既にバッタ一匹食べているんだから満腹状態のはず、私にはコロちゃんを無駄に食べるはずがないだろうと言う甘い打算があった。 だが、カマキリは貪欲だった。羽根を広げ両手の斧を広げて自らを大きく見せ威嚇行動をする。 カマキリは両手の斧を目にも留まらぬ早業でコロちゃんに振り下ろした。コロちゃんは両斧に挟まれてしまった…… カマキリの鎌(斧)は相手に対する武器としての用途を成さない、獲物を拘束するための捕獲器である。本物の鎌と同じようにギザギザの刃に挟まれたコロちゃんは刃をその身に食い込ませながら口元に運ばれていく。 カマキリは首をくいと傾けながらコロちゃんをじっと眺めていた。複眼の中に唯一輝く黒点の偽複眼を右往左往と動かしコロちゃんの品定めをする、咀嚼箇所(ウィークポイント)を探すその姿は不気味としか言いようがない。 カマキリは口を開いた。カマキリの口は上唇(じょうしん)下唇(かしん)上髭(うわひげ)下髭(したひげ)大顎(おおあご)下顎(したあご)の六つのパーツからなる。 カマキリは口を開くとその六つのパーツが散開するように広がる。散開こそするが可動域は小さくあまり大きく口を開くことはできない。
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