指揮者を決めろ!

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 佐野とは毎日メッセージのやり取りをした。亜紀がお風呂から上がってくると、いつも佐野からメッセージが来ている。 『今日の練習、男子が結構声出てきたと思わない?』 『うん、思う!最初のころは全然でてなかったもんね。佐野が頑張ってるからみんなも歌いだしたって感じがする!』 『いやいや、それは照れるなあ……。明日はパート練習じゃなくて、ずっと全体練習にしようかと思うんだけど、どう思う?』 『いいと思うよ。でも、1回くらいはパート練習したいかも』 『そっか、じゃあ5分だけパート練習にしよう、ありがとな!』 『いやいや、私の方こそいつも任せててごめんね』 『俺は、こういうの好きだから気にしないで』  こうやって佐野とやり取りをしているのは自分だけなのだと思うと無性に嬉しくなる。佐野はいつもみんなのことをほめてくれるので、メッセージ上だけでも、彼のことをねぎらいたいと思っている。直接口に出すのは恥ずかしいけれど、メッセージでなら言える。  メッセージだけでなく、学校でも今日の練習の確認や、部活のことなど佐野が話しかけてくることが多くなった。なんだか前より仲良くなった気がする。  あっという間に時は過ぎ、合唱コン本番まであと10日となった。  そこまでせまったとき、ついに事件が起きた。  合唱コンと部活のことで頭がいっぱいで、すっかり忘れていた。もしかしたら、亜紀の気が付かないところで物事は進んでいたのかもしれない。  しかし、時すでに遅し。もう、巻き戻りはしない。
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