稀波ターン1・恋という、未知のもの

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稀波ターン1・恋という、未知のもの

「す〜みちゃんっ あっそびましょ〜♪」 「はぁ〜い♪ ちょっと まってね〜♪」 夏休みは、毎年 大体、寿実(すみ)ちゃんちでの『宿題やっつけミーティング』から始まる。 寿実ちゃんは、うちのおじいちゃんちの近所のコンビニのひとり娘。小学校は別々だったけど、中・高と同じ学校。 計画性のかけらもないアタシは、小学校の頃はいっつも最後の1週間位で、お兄ちゃんに超手伝ってもらいながら宿題をやっつけていた。大泣きしながら。中学で寿実ちゃんと一緒になり、まあ見るに見兼ねた寿実ちゃんからの提案で、以来高1になる今も、この『宿題やっつけミーティング』が執り行われることになった。 「スケジュール厳守だよ、きぃちゃん!」 「OK!おっけー! 今年も寿実ちゃんの完璧プランで、安心・安全ですなぁ⁉︎」 …ピ〜ン ポ〜ン 「お客さんだ。珍しいな。 うち、みんな お店の方に来るんだけど。」 「だねえ。ま ちょうど完璧プランも仕上がったし。 アタシ、お店寄って帰る。靴も店側の玄関だし。」 「分かった。なんか、慌しくなっちゃてごめんね⁈ 今日のノルマは、しっかりね⁈」 「ん。」 寿実ちゃんちは、お店のバックヤードからも直でおうちに行き来できるようになってて、営業中はそっちがメインの玄関みたくなってる。 (ちょっとでも 勉強するテンションが上るよう、おやつ買ってこう。) 考えつつ、お店に出る玄関につづく階段を降りる。 階段から玄関。暗がりのバックヤード側( こっちがわ)から、華やかで清浄なライトの灯る店頭側(あっちがわ)へ。出る瞬間のまさにそう、強く瞬きする感じがスキ。眉間がくしゃってむず痒くなる感じが。 「おばちゃん、おじゃましました〜♪」 「きぃちゃん、お兄ちゃんによろしくね。」 寿実ちゃんママに挨拶して、コンビニの自動ドアをウィーンと出る。 (あれ?寿実ちゃん、さっきの来客と まだ喋ってるな。アタシも知ってる人 かな?) 「……? ……ここ、コンビニになったんやね?君んちの駄菓子屋さん[里中商店]さん。スキやったから、ちょっとさみしいなぁ。」 「ハイ…。」 「んと、オレ、岸本辰之輔(しんのすけ)。えと、小2までこの辺住んでて…。覚えてくれてるかな?」 「ハイ。さっきまで なかなか話し出さなかったから、その間にあなたのこと見てて…ちらっとよぎったトコだった、今。『しんちゃん』かな…って。」 「はいっ!! 『しんちゃん』です、オレ!! 小2の夏休みに神戸に引っ越して、ほんでまた こっちに戻ってくることになって!今日、戻って来たところで、引っ越し屋さん待ちで、今、時間できたから!」 「懐かしの[里中商店]さんに、来てくれたの?」 「ううんっ! 君に! 会いに来ました!! 引っ越してからも、オレ、ずっと好きやったみたい! です! 君のこと!!」
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