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そして、時は過ぎ、夏休み、熊本。
「ただいまー」
亮は、実家へと帰ってきた。
「兄ちゃん!」
妹の和子が、亮の荷物を受け取る。
母も玄関に駆けつけた。
「今回、帰ってくるの、随分遅かったねぇ」
「夏期講習あったから。」
「そっか、晩御飯出来てるよ。」
と言って、母は温かく、微笑んだ。
久々に、みんなで食卓を囲む。
亮は、母の味噌汁を一口飲んだ。
「あれ」
―なんだか、いつもより、心が温かくなった気がする。
「どうした?兄ちゃん」
「…涙…」
亮は、そう呟いて、涙を二粒、味噌汁に零した。
「ちょ…何泣いてるの?」
「え、嘘でしょっ?味噌汁に涙零さないの!」
母と妹のその言葉に気付かないまま、自分の体に、涙が居るのを感じて、にっこりと幸せそうに微笑んだ亮なのだった。
(完)
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