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目が覚めると、亮はベッドの上に居た。
時計を見ると、起床時間の一時間前の、五時であった。
「あ、亮。起ぎだー?」
二段ベッドの上から、同期の高柳 論が呟いた。
下から窺うに、彼はお気に入りの詩集を読んでいるようである。
「あれ、俺、自分の部屋戻ったのか?」
亮が聞くと、
「あぁ、たかみーと、はるとんと、信岡さんが寝とるお前をごごまで運んでぎたんだー」
と、論が答えた。
亮は、完全に訛りが取れているタイプだが、論は全く取れていない。
「マジか。やべぇな。申し訳ねぇ」
「あぁ。ほんに。亮、お前、大丈夫なのが? 噂じゃ、門限三十分もオーバーしたそうでねぇが」
論がそう言って、再び、寝に布団に入るのが分かる。
「……わかんねぇ。でも、悪い方に行かないように頑張るわ」
「おぉ…きばれー」
論に言われて、亮は、目を閉じた。
瞼の中の、暗い世界で、涙の顔がシャボン玉のように、浮かんだり、消えたりした。
その後、全寮で放送される、アラーム音で、皆がむくむくと起き上った。
さっきまで元気だった、論が、今度は爆睡している。
彼は、若干、サボり気質なのだった。
―そういえば、こいつが、人のこと励ますなんて、珍しいよな…
ふとそう思って、寝ている論に、
「ありがとな」
と呟いて、亮は、部屋を出た。
論は、寝ぼけた声で、
「おぉ、きばれー」
と、繰り返した。
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