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梅雨。高校二年の彼―椿 亮は、寮への帰り道の途中降り出した雨に、顔をしかめた。
最初は、小雨で、傘を持っていなかった亮は、寮も遠くないし、と思い、雨に打たれつつも、歩いていたが、徐々に雨は強まり、ついには、ザーザーと、亮の体に痛く強く当たってきた。
いよいよ亮は、さすがにもう少し雨が弱まるまで、雨宿りをするか、と近くの橋の下で少し雨宿りをすることにした。
橋の下に入ると、今まで強く叩きつけられていたものから解放され、どこか気が抜ける。
――雨は嫌いだ。
頭痛持ちの彼は、そう心の中で呟きながら、軽く頭をさすると、橋の壁に、ふぅ、ともたれかかった。
雨の音は、雨宿りをする身となると、しとしとと、思いのほか心地よいものだった。
彼はまた、ふぅ、とため息をついて、何気なく、右を振り返る。
彼は目を見開いた。
後ろには、彼と同じ学校の制服を着て、高二の学年章を胸ポケットに付けた、綺麗な肌をした、ショートボブの少女が、美しく、足を揃えて立っていた。
――この子……気配がなかった。
一体、いつからここに居たのだろう?
彼女は、彼と目を合わせると、ふんわりと微笑んだ。そして、
「椿くん?」
と言って、首を軽く傾けた。
亮は、えっ?と耳を疑った。
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