「月明かりの下で」

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「月明かりの下で」

「知っていますか?月に映された模様には、いくつか見方があるのですよ。」 「・・・そうなんですか?」 背中越しに聞こえる彼の声に、私は問いかけました。 「はい。地方によって、違った言い伝えがあるそうです。」 「地方によって?」 「例えば、東洋の国では、ウサギが仕事をしている形に見えるそうです。また、大きなハサミを持つカニと言う人もいます。こちらでは、女の人の横顔と伝えられることが多いそうです。」 「私の祖母は、深海を泳ぐイルカだと教えてくれました。」 「お祖母様は、ロマンがお有りの方ですね。」 彼の声は、闇夜と私の心に溶け込んでいきます。 「あなたのお話も、聞かせていただけませんか?」 「え・・・私、ですか?」 普段は話し役の彼が、聞き役に回ると言うので、私は戸惑いました。 「私は、あなたよりお話が得意ではありませんが・・・」 「今日は、あなたの声をもう少しお聞きしたいのです。」 彼の声には、少し名残惜しさがありました。 どうしよう・・・ 私は、夜空を見つめました。
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