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23.本音
今回のメイドサンタの衣装はクレアが作ってくれた。ひざ丈の赤いワンピースに白いポンポンの付いたケープをかける。これに以前も使ったフリルの腰下エプロンを合わせれば、立派なメイドサンタさんになった。
「赤ずきんちゃんにも見えるよ?」
サンタ帽が大きすぎて顔が埋もれてしまいそうな由香奈を見て、ミエちゃんたちは笑ってたけど。何はともあれイベント当日、由香奈は気を引き締める。
店内は食事エリアを縮小させ、空いたスペースで無料のプログラミング体験を実施することになっていた。ロボットの操作と、クリスマスツリーのイルミネーションの点滅をプログラムするらしい。
どちらも面白そうだったけれど、前回同様オープンカフェ担当の由香奈はそちらに集中しなければならない。気合を入れて、エプロンの腰ひもにクレアから貰ったカトレアのキーホルダーをお守りのようにぶら下げた。
「そんなに頑張らなくたっていいんだよ。素のままの! 由香奈ちゃんでいいんだから!」
良いことを言ってるふうな園美さんのあざとさは既にバレているから、クレアがじとっと見ている。
十時の開店と同時に、まずはプログラミング目当ての子どもたちが入ってくる。すぐに店内はいっぱいになり、順番待ちの家族連れが外の客席で暖かい飲み物を飲みながらくつろぐようになると、その賑わいに引かれて商店街の買い物客が集まってきた。
別の場所ではミニコンサートが始まったらしく、明るい音楽が聞こえてきたりして、周辺全体がざわめき出す。その賑やかさの中で、由香奈はあたふたと注文を取ったり飲み物を運び続ける。
今日は常連の子どもたちもお手伝いしてくれて、こども食堂フラワーに協力している企業や店舗を紹介するチラシを、お客さんたちに配ったりしていた。
そんな中、ソウタくんが由香奈のエプロンの裾を引っ張った。
「由香奈を盗撮しようとしてたヤツがいたから、蹴り飛ばしておいたからな」
「え……。け、蹴り飛ばすのはダメだよ」
「わあってる、コトバのアヤだよ」
任せろ、と言いたげに親指を立ててまた人込みに向かう。何はともあれ、守ってもらえるのはありがたい。
昼時にはどこか別のお店にランチへ行ってしまったのか、いったんお客さんの波が途切れた。由香奈はその間に厨房でクレアと一緒にサンドイッチの昼食を食べた。
「由香奈、大丈夫?」
「うん。二度目だし、大分慣れたかも」
先に食べ終わったクレアと交代で厨房に来た春日井にも「大丈夫?」と、クレアと同じことを訊かれた。そんなに余裕がないように見えるのだろうか、自分ではそこまでのつもりはなかった。
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